武州一の「染」
使い込むほど体に馴染む
この不思議な充足感を生み出している一番の要因は、武州一ならではの「天然発酵建て(てんねんはっこうだて)」と「先染め」にあります。
野川染織工業では、天然発酵建ての藍で糸の状態から染める藍染め技法を継承してきました。

天然発酵建てとは
藍は水に溶けません。
染色をするためには、この藍から染液をつくる必要があり、これを“建てる”と言います。
私たちは、微生物の発酵の力で藍液を建て、染色をしております。
藍は生きているのです。
藍染めの原料は、タデ科の植物の葉です。
夏の開花前に収穫した葉を乾燥させ、さらに発酵させたものを蒅(すくも)といい、私たちは今では希少となった四国産の蒅を仕入れ、使用しています。

自然と対話しながら、藍と生きる
良好な状態の藍液を作るには、四季折々の気温や湿度を肌で感じながら、毎日ほどよく攪拌(かくはん)させる必要があります。
むやみやたらに掻いたら藍は弱ってしまいます。
その勘どころが何より難しい。熟練を要する作業です。

「先染め」が美しい色と、丈夫な糸をつくる
先染めとは、生地を染めるのではなく、糸の状態で染め上げること。
糸の状態が悪いと、それだけ藍の食い込みや均一性が損なわれます。
このため、精練の前にすべての白糸を手でさばく必要があります。
先染めの仕上がりを左右する職人の技は『白っぱたき』と呼ばれ、年季と根気が要求される重要な技術です。
一見簡単そうに見えるこの作業は、「白っぱたき3年」と言われるほど。

藍染めは糸を強くする
かつて、藍染めは野良着、火消し装束、よろい、かぶとの紐など、さまざまな場面で重宝されていました。
その理由のひとつは、いつまでも丈夫で長く使えるから。
糸の状態で藍に染める「先染め」により、糸の強度が増します。
写真は、長年ご愛用いただいている武州一です。

藍染めは、からだに優しい
天然発酵建てでは、植物由来の蒅(すくも)から自然の力で染液を作ります。
このため、肌の弱い方にも安心して身につけていただくことができます。
剣道に限らずどんな武道・スポーツの分野でも、日々の取り組みが真摯であればあるほど、大会や昇段審査に臨む姿勢が真剣であればあるほど、心身へのストレスも大きくなります。
ストレスそのものは軽減できなくとも、自然由来の剣道着を身につけていただくことで、皆様の日々の鍛錬・試合・審査に寄り添えたらーー。
そんな願いを込めています。